UXリサーチャーのこだわり モデレーション編

AQリサーチャーたちの日々の気づきをまとめた連載企画「リサーチャーのこだわり」。今回はモデレーションのこだわりについてご紹介します。(前回:リサーチャーのこだわり 体力・気力編

モデレーションスキルを伸ばすには「インタビューの回数を重ねて経験値を積むこと」。毎回初対面の参加者を前にして、初めての状況に何度も遭遇する度にこの先輩の言葉を思い出します。

様々な状況に対応していくうちに自然に身に付くことの中には、普段は無意識にしている行動もあるでしょう。周りのリサーチャーと細かいこだわりや気づきを共有してみると、「わかる〜」と盛り上がるだけでなく、考えるきっかけとなり、確かなノウハウとして定着していくように思うのです。

こだわりその 1

インタビュアー思考と管理者思考の両方を持つ

録画ボタンを押し忘れてしまった経験を持つリサーチャーは多いのではないでしょうか。インタビュー当日にリサーチャーが行わなければいけないToDoリストには、録画ボタンを押すこと以外にも、前の参加者のデータ消去やいくつかの数値の計測などの項目がずらりと並ぶ。脳みそを分割して、インタビューを実行しながらも、頭の中ではToDoリストをひとつづつチェックしていくイメージを持っています。

こだわりその 2

参加者に対してはいつもニュートラルな気持ちを保つ

あるとき、インタビュー録画を見ながらプロダクトの操作状況を再確認していたら、その参加者に対してインタビュー時に抱いていた印象と違っていて驚いたということがありました。インタビュー当日には、その参加者が支離滅裂な操作をしているように感じてしまっていたのだけれど、改めて見てみると他の参加者の操作とも似通った傾向があって、特段疑念を抱く必要のないインタビューでした。

どうやら疲れてくると、寛容さが薄れ、ちょっとしたことで参加者のことをネガティブに捉えてしまう傾向が自分にあることを知りました。同じ作業の繰り返しで集中力が低下することを感じたら、体力・気力を補うように意識しています。

こだわりその 3

疲れたら休息をとることも準備のひとつだと捉える

インタビューによっては、モデレーターと参加者以外に様々な人が関わっています。インタビュールームには通訳と速記係、見学ルームにはクライアントから複数人。合間の時間で進行の確認やデブリーフィングをしたら、大抵は雑談に花が咲くもの。参加したい気持ちはあるものの、少しでも集中力が保てるように体力を温存しておきたいという状況ならば、休憩中のコミュニケーションは同僚に任せるようにしています。気後れせずに思い切って休息を取るためにも自分自身でその必要性を認識するようにしています。

こだわりその 4

30分前にはモデレーションをする気持ちに切り替える

インタビューをする前には、誰しも少なからずモデレーターとしての自分に頭を切り替えているのではと思います。インタビュー開始の30分前くらいから、諸々の準備を進め、工程をおさらいしながら、自分の中で緊張感を高めて切り替えていく。モデレーション中に持つべき視点、ちょうど良いテンションをチューニングしていく心と頭の準備を意識的に行うと、落ち着いたインタビューの滑り出しに繋がります。

##こだわりその5:調査といえども、人として興味を持つ

モデレーターと参加者という役割での出会いだけれど、人間同士であることに変わりはありません。段取りも時間配分も計算の上でのコミュニケーションではあるけれど、人として興味を持つ気持ちは忘れないようにしています。60分間たっぷり会話したあとでは、参加者から(冗談で!)お茶に誘われたり、姪に似ていると言われたり。インタビュー中、この人とだったら友達になりたい、と思う瞬間があることはいいことだと思っています。

こだわりその 5

何を着るかも場づくりの大切な要素

共通のルールはないけれど、基本的にはリサーチのTPOに合わせて服選びをしています。インタビューの性質(趣味系やビジネス系かなど)に沿ってカジュアル〜フォーマルの度合いを考えたり、個性的な服(動物柄など)は避けて、紺やグレー系を選んだり、動きやすさを考えたり。あるリサーチャーは、第一印象でテンション低めに見られがちなので、モデレーションの日はあえて明るめの服を選んで自分の印象を服で補っているんだとか。モデレーターの見た目も、インタビューの場作りの大切な要素のひとつと捉えています。

こだわりその 6

デブリーフィングはその日のうちに

どんなにハードなスケジュールでも、その日中に数分でも良いからデブリーフィングすることは必須です。記録係や見学者がいる場合は、一緒に共有をしていくと、自分以外の視点も吸収でき、次回からのインタビュー内容も調整できます。

インタビュー直後に抱いた全体的な印象や細部への気づきは、一晩寝ると驚くほど失われてしまうので、やはりその日のうちに書き留めておくべきものだと心しています。

2021年 03月 26日