毎週のように繰り返し行われる定例会議というのは、どうしても時が経つうちに緊張感が失われてしまうものです。よくない習慣がついたり、そもそもの目的を見失ってしまったり。そうなった時には、場所や時間、参加者など環境に変化をつけたりして改善を試みたりもします。
AQの社内デザインレビューも毎週行われる定例会議のひとつ。プリントアウトしたデザインを囲んで、2-3人のデザイナーが立ち話をしていた頃と比べて、今では3箇所のロケーションから2倍の人数が参加して行われる形になっています。今でも建設的にフィードバックをし合って学びを得られているだろうか? 何かが上手くいっていない……という感覚がチーム内で認識されてきた頃、問題をはっきりさせるために思い切ってリサーチャーである友人2人へ調査を依頼しました。わざわざ外部の人に頼んだのは、潜んでいる問題が繊細で共有のしづらさを感じていたからかもしれません。
デザインレビューをするためのフィードバックツールは世の中に色々あるのだとしても、結局デザイナーが前に進むために役立つような、ときに曖昧だったり広い意味でのレビューを行うためには、リアルタイムでの会話が一番だと思っています。
自分が関わっているデザインを自らでプレゼンし、フィードバックを受け、解決策を提示するというプロセスは、大事なトレーニングにもなるでしょうし、SlackやInVision、Basecampなどを使ったテキストでのフィードバックは、マルチタスクをこなしていたり、内容が明確なYes/Noでない場合には、誤解を招いたり逆に時間を要することも起こりがちだからです。
リサーチャーには複数回のデザインレビューへの同席後で、メンバー個人へのインタビューを行ってもらいました。
その結果分かったのは、各デザイナーがすでに考えていた改善案と、デザインレビューに多種多様な感情を抱いていることでした。 相反している意見や、解決するのが困難である内容も含まれていたけれど、すぐにでも解決できそうで、全員が共通して不満を感じていたことに空間的な問題がありました。
一人のデザイナーのデスクに集まってレビューを行っていた頃はこのような感じでした:
この配置が上手くいっていなかった第1の理由として、パソコンを操作している人のことを周りは「担当者で仕切っている人」と捉えていたのに対し、操作している人は、「見下ろされている」ことや「プレッシャー」を感じ、自分のパソコンを見られていることに対する居心地の悪さも感じていました。(個人的な通知がレビュー中に表示されたりして。)
第2には、デザインをプレゼンする人とは別の人がパソコンを操作していることで、自分のデザインなのに距離を感じることになってしまったことでした。
そして第3には、アイコンタクトが取れないための精神的な影響があるということでした。東京オフィスでは、横並びでモニターを見て話しており、また、Googleハングアウトではカメラに顔が写っていない状態で行われていました。デザインをスクリーンシェアをすると、顔を見ずに話すことにもなってしまいます。 アイコンタクトが取れないことは、デザイナーが気持ちを伝えることをより難しくし、フィードバックが必要以上に手厳しく聞こえてしまう要因ともなっていることがわかりました。
また、フィードバックの質自体も改善すべき!という意見も多く聞かれました。ひとつの案件に割ける時間も限られています。プロジェクトの背景を十分に理解できず、表面的な反応以上のフィードバックが出にくくなっていました。デザイナーは自分のデザインに注意を払ってもらえていないと感じ、レビューする側も思っていたことが言えなかったという、双方の不満となっていました。
他にも、前回デザインレビューした後どう改善していったかが共有されていないことも不満として挙げられました。 これらの内容全てを1時間で網羅するのは難しいことは明白でした。
まず、東京オフィスのレビューの空間の課題から取り掛かりました。誰かがこのデザインレビューのオーナーであるかのような構図を無くし、全員が参加者として自らがプレゼンを行えるように、共有で利用しているスタンディングデスクにiMacを置き、カメラに顔が映るようにセットしました。
また、Slackで新しいチャンネルをオープンし、簡単なスケッチやInVisionでのプロトタイプの進捗は常に共有するようにしました。前週に共有されたデザインのその後を追えたり、次回のデザインレビューでは何を話し合いたいかを前もって見ることができるようになりました。 直接プロジェクトに関わっていないメンバーにとっても関心を持ちやすく、個人的にアドバイスがしやすい環境となったと思います。
それから数ヶ月が経過した今でも、サブモニターを増やしたり、モニターを壁に取り付けてオープンなスペースを確保したり、デザイナーが最大の力で取り組んだクリエイションを自信を持って伝えることができ、質の高いフィードバックが得られるための場を求めてより良くすることを考え続けています。
今回このリサーチを通して得られた一番大切なことは、具体的に何を変えたかということよりも、どうしたらよいデザインレビューになるのかをみんなで考えられたことでした。このプロセスに参加したことで、一回きりのトップダウンで起こる変化ではなく、一貫性を持ちながらも繰り返しチーム主導で変化し続けられるようになったのでしょう。
結果としてお互いに以前よりも満足度の高いフィードバックができるようになったと感じています。そして、全員がデザインレビューがうまくいっているかどうかを常に意識できるようになったのです。
もしもあなたがチームでのデザインレビューを行っていたなら、あなたの試行錯誤のお話をぜひお聞かせください。
Illustrations by Saphira Zahra / Edited by Sophie Knight