日本人デザイナーにとって、時に欧文書体の選択は難しいものです。書体の持つ、微妙なニュアンスや文化的背景が掴みにくく、「Helvetica」や「Garamond」といった古い付き合いの書体から離れられなかったり、真意とは異なる意味を含む書体を選んでしまったりするのです。
ところで、毎年何千もの欧文書体がリリースされていることをご存知ですか。このシリーズでは、現代の世界中のタイプデザイナーによってつくられた、上質かつ多様に使える優れた書体をご紹介していきます。
どのような人が、何を思ってこれらの書体をデザインしたのか、知りたいと思いませんか。
60 let Akademije za likovno umetnost in oblikovanje. Design by:Matjaž Čuk
この書体を作るにあたってのインスピレーションは何でしたか?
「Klavika」は自然に思いついたわけではないアイデアの組み合わせで出来ています。当時、私は多くの書体をいじりまわしたり、いろいろと試したりしていました。特に、左から右への自然な動きと、構造ではなくリズムとしての幾何学図形、の二つを組み合わせようとしていました。最終的にその二つのアイデアがうまく合わさって「Klavika」がうまれました。一瞬でできたと言いたいところですが、まあ大抵のタイポグラフィと同様、長い時間をかけて、多くの偶然が合わさってできたものです。
通常の書体のセットにあわせて矢印もセットに入っています。どうしてですか? またこれは「Klavika」のコンセプトとどのように関係しているのですか?
私は矢印のような、正規の書体ルールがない、ユビキタスなシンボルに強い親近感を覚えています。それらは標識の書体セットに含まれていないにも関わらず、おのおの方法で一般的に広く使われています。それらがタイポグラフィパレット上でほとんど忘れられているということが私の興味を引いています。「Klavika」では小文字・大文字用の両方の矢印をデザインしましたので、テキストやディスプレイ上で他の記号と同様とてもシームレスに使うことができます。
Website for Atelier David Smith. Design: group94
「Klavika」の理想的な使い方はどのようなものですか?
もともとは10ptから100ptくらいの中程度のサイズのプリント用にデザインしました。しかし、形状がスクエアであることで、スクリーン上でもとても映えることが分かりました。例えば、現在、アメリカのNBCネットワークでは、画面上のタイポグラフィとしてこれがよく使われています。
「Klavika」で一番気に入っている文字はどれですか?
イタリックの小文字の終盤半分が特に気に入っています。「tuvwxyz」の部分です。この部分のゴシック書体のイタリックは他の部分とフィットさせるのがいつも難しいのです。ということもあり、これはうまくいったのでとてもハッピーです。すいません、7文字選んでしまいました。
好きな書体はありますか? もしくはあなたに強く影響を与えているものは? またそれはどうしてですか?
「Frutiger(フルティガー)」です。観念的にも美学的にもこのタイポグラフィは私にとってとても重要です。Adrian Frutiger(アドリアン・フルティガー)は私にとって意味のある最初のタイポグラフィデザイナーでした。というのも、彼の作品は常に用途、最終的な使われ方を想定して、デザインされたものだからです。今でも彼の作品はかなりモダンで、今日的です。Eric Gillなども好きですが、Frutigerの作品が私に教えてくれるのは、タイポグラフィデザイナーは過去ではなく、自分が生きている現在のためにデザインをしなければならないということです。
翻訳:藤高晃右
2007年 07月 22日