毎月恒例となっているこのイベントは、もともと東京で生まれ、今や全世界70都市以上で開催されるまでになっている。
ごく単純な形式に則って、世界中のクリエイターが作品やアイデアを多くの人前でプレゼンテーションをする場として重宝されている。
ペチャクチャナイトが素晴らしいのは、たくさんの人が行き交うパーティーとしてのカオスな状態と、美術学校の批評会を思わせるような緊張感の両方が常に保たれていることにあると思う。注目されたいプレゼンテーターがいつも必死に戦っているのが見てとれる。 赤コーナー、作品を「売りたい」プレゼンテーター。青コーナー、ビールを売りたいバーテンダー。プレゼンが上手いほどビールの売り上げは下がり、下手なほどビールが売れることになる。
といいつつ、中には僕のように飲まないものもいる。僕は、この30ヶ月を通して15回以上、東京のペチャクチャナイトに足を運び、3回人の前に立った。そこで、常連の参加者としていくつかアドバイスができればと思う。ビールに頼らずとも、話が弾む素晴らしいプレゼンにするために。
(注意!ほかのどんな自己表現と同じようにルールは破る為にあるもの。たんなる酔っ払いや無口なビデオアーティストが素晴らしいプレゼンをするのを見たこともある。)
基本的なのはポートフォリオだが、それが必ずしも必須というわけではなく、趣味の話が成功したこともある。雲の写真、愛についての分析、ハネムーンの写真など、要するに説得力があれば何でも構わない。
ポートフォリオのプレゼンでも、全スライドを統一したストーリーでつなぐように展開するとよりよいものになると思う。スクリーン上のイメージを説明するだけでなく、自分の思考過程や、ひらめきなどを披露するようにする。そうすることで聞いている人を引き込むことができるのだ。
丁寧に時間をかけてつくること。テーマ選択、資料収集、脚本作成、ペースの調整、など時間が掛かるステップばかり。数日間に渡って6時間は時間をかけることが必然だ。
スライドが完成したからといって、人の前に立ってプレゼンをする準備が出来たわけではない。どのくらい練習したかによって20秒はあっという間にも、永遠にも感じられる。軽快なテンポで話し通せ、内容も完全に把握した状態で、違和感が無くなるまで練習するといいだろう。
プレゼンテーションの内容を明かさずに、手短に自己紹介をする。
2ヶ国語以上でプレゼンテーションをする場合、各スライドにつき10秒ずつ、ほんの少ししか話せない。話し終わる前にスライドが次に移ってしまうかもしれない。もしそうなっても新しいスライドを2つ目の言語で話し始め、| A•B | B•A |のリズムでプレゼンテーションを通してもいいだろう。言語の切り替えが少なくて済むので話し手にとっても聞き手にとっても楽なはずだ。
観客に向かってプレゼンテーションする。話し相手は、靴ではなく、プロジェクターでもなく、壁でもノートでも最前列でもない。にっこりしながら観客の目を見て、全員とそしてひとり一人と話そう。
20秒は確かに短いが、6分40秒となるとかなり長く感じる。20スライドを通して同じ勢いを保たなければ、観客はうんざりしてしまうだろう。
すぐに帰っては、、、いけません!部屋を見渡して人の反応をこっそりうかがう。もしかしたら誰かが話を始めるきっかけを待っているかも知れない。言いたいことを言ったところで、相手が対応するチャンスも与えてあげるべきだ。
ペチャクチャナイトは、数時間で大都市のクリエイターを垣間見ることができるまれな機会だ。単なるスライドショーではなく、人間同士の会話、人間関係を築く場として維持されている。遠慮せずに作品を発表し、ちょっとした衝撃を残して、ペチャクチャナイトをより良いものにみんなで作り上げていこう。
2007年 07月 2日