作業スピードを短縮する翻訳ワークフローのUIリデザイン
案件の納品スピードを上げることは、翻訳者の収益力と顧客満足度アップの鍵であり、結果的にはビジネスの成長を意味します。数ヶ月にわたって、わたしたちはGengoのプロダクトチームとともに「翻訳者が数分もしくは数時間作業をしようと思った時に、どうしたら効率良くかつ楽しく作業ができるのか?」という課題に取り組みました。
「AQに入ってもらうことで、数々のアイデアを素早く試すことができました。最終的には、Gengoでの翻訳文字数のボリュームを大幅に上げることができました。」ロバート・ラング(CEO)
多くの翻訳者にとって、Gengoは好きな時間に仕事を受注できる大事な収入源です。わたしたちは、スマートフォンで簡単に作業できる環境があれば、彼らが昼休みや通勤時間の隙間時間で一口サイズの翻訳ができるのでは、という仮説を立てました。
1-2行ずつ翻訳作業を進められるインタフェースをプロトタイピングしました。原文が入力画面の上部に表示される縦型ののレイアウトであれば、小さな画面でも非常に効率的に翻訳作業ができる、ということがユーザビリティ調査で分かりました。
次に、スマートフォンで得られた知見をデスクトップに展開しました。ほとんどのGengoの翻訳作業は、デスクトップ上で行われます。
いろいろな翻訳インタフェースを研究したところ、左右にパネルが2つ並ぶものがほとんどでした。実際の利用シーンを観察すると、目線とマウスの移動距離が長くなるので、翻訳のスピード自体が落ちていることが分かります。
多様な文書タイプを扱うGengoの案件には、ツイートや短いブログ記事の翻訳が含まれます。また、大きな案件を分割して受注することもできるので、短い文章を翻訳するケースが結構あります。Gengoのインタフェースで短文の翻訳をする際に、翻訳者はキーボードとマウスの両方を駆使していました。例えば、25件の短文翻訳をするのに75クリック以上必要だということが分かりました。
逆に、ある程度の長さがある文章を翻訳する場合、翻訳者は原文をWordなどのテキストエディターにコピペした上で作業し、訳文が完成したらGengoアプリにコピペして戻していることが分かりました。また、数行ずつ上から翻訳をしていって、最後は訳文のみの状態でレビューをするために、原文を削除していることが観察されました。
この2つのワークフローを取り入れた翻訳インタフェースをモックアップしました。
モバイルのUXデザインで得た知見を活用した短文向けの新しいインタフェースでは、翻訳者が次の一行に集中し、対となるテキストフィールドに訳文を入力していくフローを実現しました。訳が完成していくに連れてページ内の位置がどんどん進むので、達成感が実感できます。また、以前のインタフェースで75クリック必要だったところ、たったの1クリックで済むようになりました。
インタフェースのリデザインによって案件の平均納品スピードが上がったため、翻訳者はもちろん、Gengoにも大変喜ばれました。
「読み込みを待ったりクリックをしている時間が大幅に減ったので、翻訳するスピードがあがりました :D 」 - Gengoの翻訳者
長文の翻訳インタフェースについては、翻訳者が普段使っているWordのUIをもとに、実際のワークフローにインスピレーションを受けた機能を付け足しました。翻訳者は原文の好きなところをクリックし、作業開始できます。原文と訳文は違うフォント色で表示されるので、視覚的な棲み分けがしやすくなっています。また、翻訳が終わってショートカットキーを打つと、訳文のみを表示するビューに切り替わります。自然な文章になっているかを確認し、最終調整をしたあとに、Gengoに投稿します。
このインタフェースを何人かの翻訳者に見せたところ、Gengoを使った作業に限らず、翻訳作業自体に役に立つものだと気づきました。彼らの了承を得て、デモとコードを公開します。
デザイン・調査・プロトタイピングは、GengoのRichard Hatton氏と一緒に行いました。