リサーチの内容や性質、どんな分析をするかなど、その時々の条件によって様々な記録の取り方があるかと思います。時間や記憶力、タイピングの速さや正確さなども関連してくる、簡単そうに見えて実は奥が深い…今回はそんな記録のとり方について日々の試行錯誤をご紹介します。

今回は主にPCで文字起こしをしていくタイプの記録のとり方についてまとめています。

※ AQでは記録係のことをノートテイカー、テキストによる記録のことをノートと呼んでいるので、以後、ノートテイク/テイカー、ノートという言葉を使っていきます。

AQでは、ノートテイカーの立場として次の3つのパターンがありますが、今回は特定のパターンに絞らず、全般的なことをまとめました。また、インタビューと同時並行で行う「その場」のノートテイキングに焦点を絞っています。

  1. ノートテイカーがメインの分析担当者である
  2. ノートテイカーは分析アシスタントとして参加する
  3. モデレーター、ノートテイカー、分析者のすべてを一人が担当する

試行錯誤1:分析する時にどんな記録があると便利なのか?を確認する

ノートは分析の時に使うものなので、「分析に必要な内容が記録されている」ことが重要です。せっかく頑張ってノートをとったものの、書き出していた問題点が的外れ、分析者がほしかった内容が記録されていなかったなどは、記録者にとっても分析者にとっても悲劇ですね…。

なので、どういうノートをとってほしいのか(発言録なのか、問題点の抜き出しなのか、参加者の行動記録なのか、など)は、分析担当者に確認するようにしています。自分が分析担当の場合は、どんな分析をするのかを考えた上で必要な情報を取れるように伝えるようにします。

試行錯誤2:その時々に最適なフォーマットを用意する

基本的に、ノートのフォーマットは作っておくようにしています。どんなフォーマットかは、リサーチ内容によって変わりますが、例えば、メトリクスデータの取得が重要な場合は書き漏らしが無いようにインタビューガイドと同じ順番に入力欄を1個1個作ったり(モデレーターが聞き漏らした場合にフォローも可能)、逆に非構造化インタビューのときはざっくりとした枠だけを用意したり。作ってみたもののなんだか使いにくい、ということももちろんあるので、そういうときはインタビューの合間にフォーマットを修正したりして、なるべく効率よくノートが取れるよう工夫しています。

試行錯誤3:バックアップ用のツールは常に準備

ノートを取る際、Googleドキュメントを使うことがあります。オンラインサービス故、途中でネットワーク環境が悪くなりインタビューの途中で使えなくなったことがありました。また、ノートテイク中に限ってエラーが頻発したりGoogleの強制再ログインのタイミングに引っかかってしまうなんてことも…。

オフラインで使用できるように設定はしていますが、それでも上記のようなハプニングが起こることが経験上あるので、バックアップとしてローカルのメモアプリを開いておいて、いつでも切り替えできるようにしています。また、PC自体が壊れるということもありえますので、メモとペンも念の為常にスタンバイさせています。

試行錯誤4:発言、行動、考察は区別する

いざ分析を始めようとノートを見返したとき、参加者が実際に発言したことなのか、ノートテイカーの考察なのか、はたまた参加者の行動を記録したものなのか、わからなくなったことはありませんか。自分が書いたノートの場合はなんとなく記憶があるかもしれませんが、他人が書いたものだとそれらを解読するのは結構大変。これを回避するため、自分なりのルールを決めています。例えば、行動の場合は<>でくくる、発言はカギカッコなしでそのまま書く、考察を書く用の別の欄をノートに作っておく、など。これに関してはAQのリサーチャー内で統一したやり方は現状無いのですが…、重要なのは、ノート内での一貫性が保たれていることだと思います!

試行錯誤5:モデレーターの発言なのか参加者の発言なのかを明確に

インタビューガイドには書いていない質問をモデレーターがすることも多々あります。わざわざ書かなくても影響がない内容の場合、時短のためにあえて書かないこともありますが、ユーザビリティテスト中の介入や、話の流れが変わるような質問は分析に大きく関わってきますので、必ず記録しています。その際に大事なのは「モデレーターの発言だと分かる」ことです。モデレーターの発言は()でくくったり、発言の前か後に「MO」と書いておく、などして、参加者の発言とは区別できるようにしています。

試行錯誤6:書き漏らしたところがどこか、わかるようにしておく

ノートテイキング中、文字変換に手こずったり、ミスタイプを修正しているうちにインタビューを聞き逃してしまう、ノートに視線を向けている間に参加者が操作を進めてしまい何が起こったか記録が取れなかった、ということが人間なので割とあります。そういうときは後から録画を見直しますが、何人もインタビューしていると、どの参加者のときだったのか、すぐに思い出せないことがあります。そのため、書き漏らしがあったところには特定のマーク(★マークなど)をつけたり、だいたいの時間を記録しておくようにして、時短で探せるようにしています。

試行錯誤7:注目ポイントは「command+B」で素早く強調

ここはユーザビリティ上の課題だな、この発言は分析のポイントになるなと思った時には、見返しやすいように太字にしています。キーボードのショートカットですぐにできることが魅力です。また、モデレーターが参加者にタスクを説明している間など、時間に余裕ができたときは、更にマーカー機能を使って、後で見る時に発見しやすくなるようにしたりしています。

試行錯誤8:キーボードのタイピング音は雑音と心得よ

事情によりノートテイカーが別室にいられず、参加者と同室にいなければならない時やモデレーター自身がノートを取る時に、タイピング音が問題になることがあります。参加者がタイピング音を気にしてしまったり、録音やストリーミングで見学している方に影響してしまったりするからです。使っているPCの構造上どうしても音が大きくなってしまったり、指の力が強かったり(筆者)とどうしようもない場合もありますが、音の小さい外付けキーボードを使ったりなるべく音が小さくなるように優しくタイピングしたり、なるべくマイクから離れて座るなどしています。

また、特にユーザビリティテストの場合、参加者がタスク実行中に途中からタイピング音がし始めると、「今、なにかやってしまったんだろうか?」という不要なバイアスを与えてしまいますので、そういう場合は、特に記録することがなくても常にタイピングはしておく、という小技も身につけました。


いかがでしたでしょうか。

この記事を書くためにAQリサーチャー内でネタ出しを行いましたが、思いの外いろいろとネタが出てきました。また最初に記載した3つのパターンのうちのどのパターンかによってもノートのとり方や意識の持ち方に違いがあるようだったので、そのあたりについてもいつか続編が書けたらいいなと思います。


文:法邑有美 絵:Eiko Nagase