こんにちは。AQの鎌田です。 1月21日に開催された「Ride the Lightning(ライド・ザ・ライトニング)vol.17」のレポートをお届けします。

毎回数名のデザイナーやデベロッパーをスピーカーとして迎え、スキルシェアや問題定義を目的とする本トークシリーズ。17回目の今回は『愛されるプロダクトの秘訣:新たなデザインのプロセスを探る』というイベントテーマで、特別拡大版を開催しました。

今だからこそ知りたい!と感じていた、プロダクトの成功の鍵を握る「デザインプロセス」。 できたてホヤホヤのプロダクトを抱えてお集まりいただいた3組のスピーカーの方々に、リリースまでのプロセスについてたっぷりとお聞きしました。

それでは、内容を簡単にご紹介します!


Ando

####その1:
プロモーションビデオ制作をデザインプロセスに活用する

スピーカー:安藤 剛THE GUILD
プロダクト:カレンダーアプリ Staccal 2

Ando

10万ダウンロードを記録し人気を博したStaccal1から更に機能を充実させて、2014年1月にリリースされAppStore総合1位を獲得したStaccal2。 12種類からレイアウトが選べるカレンダーや、リマインダー機能などあらゆるカレンダーのニーズに対応するアプリです。

Stacca2のアプローチは、Staccal1のリリースの経験を活かしたものとなったと安藤さんは言います。 Staccal1では、アプリの完成後、いざプロモーションムービー制作に取りかかった時、何を伝えたかったのかと戸惑う事態に遭遇したとのこと。 どのカレンダーアプリにも負けないくらい高機能なアプリになったのに、視覚的にどう伝えたらよいのかわかっていなかったことを実感したそうです。

結局は、ムービー制作によって見えてきた改善点に合わせてデザイン・開発をやり直すなど、リリースできるまでに時間がかかってしまいました。 そこでStaccal2では、ムービー制作をプロトタイピングの時点で早々に検討し始めることにしました。リリース時を想定し、自分たちがユーザーに伝えたいイメージを固めてムービーを作ったとのこと。開発の早い段階で完成後のイメージが明確化できた事で、その後の開発がスムーズに進んだのだそうです。

staccal2

お客さんからは、ムービー制作についての質問が上がりました。どのようにしたらわざとらしくならずに自然にアプリ体験をムービーで伝えられるのか。その答えは、演技が必要なシーンは極力使わないこと。登場人物をあえて動かさず、動きのない絵をつなぐことで動きを出していくのだそうです。今後、ムービー制作を考えている方にとって、参考になりますね。

デザイン・開発前のムービー制作が、チームにとってユーザー像をしっかり認識するプロセスに役立ったというお話は、ペルソナにも通じる考え方で非常に面白かったです。

Staccal 2 - Calendars and Reminders


続いて2組目、12月に出版された書籍「僕らの時代の本」ができるまでのお話。

####文章と真摯に向き合うための、いつもと違うプロセス

スピーカー:Craig Mod + Luis Mendo + 長瀬映子(AQ)
プロダクト:ぼくらの時代の本(ボイジャー)

bokuranojidai-cover

ぼくらが作るその本は、紙に印刷された本が思想やアイディアの具現化であり得ることを、常に人々に思い出させるものとなる。

著者でありデザイナーでもあるCraigさんとイラストレーションを担当したLuisさん、そしてAQデザイナーの長瀬の3人が、分野の垣根を越え肩を並べて仕事をすることがこのコラボレーションの姿となりました。

Craig

「紙の本を作るには、その本の思想やアイデアがカタチになって現れているべきだ。」という前提がまずそこにあった、とCraigさんは言います。 この本で何を伝えたいのか? 著者から直接インスピレーションを受け、共に作業をし、フィードバックすることで、より積極的に本自体の姿を形作ることができたのだそう。

本が出来上がるまでには、何度もイラストレーションを書き直し、本文ページのレイアウトを繰り返し、通常よりも長いスパンで3者が本作りに関わることになりました。

やや長めの独特なオープニング(前付け)の構成は、この本の世界へゆっくり導いていくようで本自体の理念を印象づけるようなものとなりました。これも、著者とダイレクトに仕事ができたからこそと振り返ります。

Craig

クライアント(この場合は、著者)とデザイナーが、ここまでシンクロしてコラボレーションできたというのは非常に珍しい例だと思いました。この独特なプロセスがあったからこそ、このような本ができたのだと納得です!


最後は、2015年AppStoreベスト新着アプリに選ばれたPicseeです。

####僕たちのプロセスは、小さくも力強い「Resilient」

スピーカー:ドミニク・チェンDividual Inc.
プロダクト:プライベートなビジュアルコミュニケーションアプリ Picsee

Picseeは、撮影した写真が自動的にグループ内へアップロードされ、その写真上でメンバーとチャットができるというアプリです。カメラロールを共有するという、とてもプライベートな感覚でコミュニケーションできます。

Picsee

Picsee

プロトタイプに1時間、リリースされるまで2年間かかったとドミニクさんは話します。その間、アプリ名は5回変わり、デザインも4回、スクラッチ開発も3回作り直しとなりました。その他にも、iOSバージョンアップデートを2回経験し、UIは数えきれないほど作り直したのだそうです。

Picseeのデザイン・開発のプロセスは、名付けるならば「4D-D process」(かっこいい!)。 ディスカッションをして、ラフスケッチを作り、開発と同時にデザインも進行する。デバック中も、デザインへの気付きが生まれるので、どんどんアップデートしていきます。 また、Dogfoodingと呼ばれる、自分たちで試して使い倒すことを大事に考えました。

Picsee

最初はこのアプリについて、写真共有のプロセスを便利にした機能、と捉えていたメンバーも、実際に使っているうちにカメラロールがハックされた感覚がおもしろい!という気づきがあり、利便性よりも感情を共有できることに重きを置くようになったのだそうです。

このようにアイデアの素をじわじわと発酵させていくようなプロセスを通して、Picseeは写真を共有することが視覚的なコミュニケーションとなり得るアプリへと進化していったのです。誰とでも使えるというよりは、家族や共通の趣味を持つ人とプライベートに写真(=感情)を共有することで、親しみが生まれるとドミニクさんは言います。

リリースまでの2年間を乗り切った3人のチームを支えたのは、1時間のプロトタイプで共有した強烈な体験だったそうです。ゴールを共有することがいかにチームを強く結びつけるのか、その大切さを改めて感じました。


いかがだったでしょうか? 多様化するデザインプロセスについて、考えを深めるきっかけになったら…と願っています。

AQでは、デザイナーとエンジニアのためのトークイベントRide the Lighting(ライド・ザ・ライトニング)を開催しています。 毎回4名ほどのスピーカーが、日々の仕事を通して感じた発見やプロセスなどをシェアしています。

Picsee

Facebookページでイベント情報をお知らせしていますので、ぜひ見てみてください。 RideTheLightningのFacebookページ

この記事をつくった人たち

  • Writer: Mamiko Kamata
  • Photo: Luis Mendo, Gueorgui Tcherednitchenko (www.gueorgui.net)