日本人デザイナーにとって、時に欧文書体の選択は難しいものです。書体の持つ、微妙なニュアンスや文化的背景が掴みにくく、「Helvetica」や「Garamond」といった古い付き合いの書体から離れられなかったり、真意とは異なる意味を含む書体を選んでしまったりするのです。

ところで、毎年何千もの欧文書体がリリースされていることをご存知ですか。このシリーズでは、現代の世界中のタイプデザイナーによってつくられた、上質かつ多様に使える優れた書体をご紹介していきます。

どのような人が、何を思ってこれらの書体をデザインしたのか、知りたいと思いませんか。


Amalia (2006)

Nikloa Djurek,
Typonine
クロアチア、ザグレブ

ポイント
  • いろいろな太さがそろっているので、見出しとしてもきれい。
  • ところどころにインクの溜まったような雫の形状が入っていて、基本構造はかなりしっかりしているのだが、ソフトでかわいい雰囲気がある。

この書体を作るにあたってのインスピレーションは何でしたか?
万年筆を使って描く練習の中から自然にできてきました。それからすぐ、コンピューターで1種を制作し、その後3種の太さを加え、最終調整を経て完成しました。

名前は僕の祖母のAmaliaからとりました。というのも、彼女は万年筆で絵を描くがとても上手くて、そのスケッチをよくテーブルクロスの刺繍にしていました。

通常、セリフの書体はサンセリフよりも書体の太さの種類が少ないのですが、「Amalia」の場合は、どれも美しくて統一感がありながら、4種の太さが用意されています。太めの書体をデザインするプロセスを少し説明していただけますか?

本文用に使うのには、普通それほど多くの太さは必要ありませんが、大きな見出しとしても使えるようにいくつかの太さを追加しました。

通常のものとボールドのものをデザインしたあと、Erik van Bloklandが創ったソフトウェアSuperpolatorを使って中間の太さのものをいくつかデザインしました。

Erik van Bloklandは私の先生だったこともあり、数年前に、まだその開発初期段階だったころからSuperpolatorを使い始めました。当時、エックスハイト、太さ、高さなどをいじって試行錯誤をしていたのですが、Superpolatorはその作業にうってつけでした。というわけで、Superpolatorを使うのはとても合理的なことでした。

もちろん、多くの場合、最終的には手で調整をしなければいけないですし、特に2つの書体間に大きな違いがある場合ならなおさらです。しかし、それらの多くのことはSuperpolatorによって簡単にコントロールすることができるのです。

また、Superpolatorで自動的に中間の太さのものを創りだす前に、元の細い書体と太い書体が互換性のある形状に調整する必要がありますが、その作業にはTal Lemingのprepolatorも使用します。

「Amalia」の理想的な使い方はどのようなものですか?

詩や、小説といったテキストを構成するのに最適です。しかし、年次報告書や、CDジャケットなど、全然違った用途に使う人も多くいます。私には思いもつかない使い方を見るのはいつもとても幸せです。


「Amalia」で一番気に入っている文字はどれですか?

難しい質問ですね。私はもっと小さい細部に興味があります。例えば、左右非対称で、少し湾曲したセリフの部分がこの書体に躍動感を与えていると思います。常に遊び心にあふれた細部をつくりだす万年筆でのデザインを思わせる感じが特にそうですね。

好きな書体はありますか? もしくはあなたに強く影響を与えているものは?

ある書体というよりも、私を取り囲む環境が私に大きな影響を与えていると思います。ハーグに住んで、王立芸術院(Koninklijke
Academie van Beeldende Kunsten) のType & Mediaプログラムの大学院で学びました。

タイポグラフィーや特にそのデザインに興味があるならば、ハーグの王立芸術院Type & Mediaプログラムはまさに最高の場所です。プロの書体デザイナーになりたい人にはうってつけです。そもそも、すばらしい歴史がありますし、手書きの書体、石彫りの書体から近年のデジタル機器まで、幅広い分野に対応したすばらしい指導方法を確立しているからです。かの有名なGerrit Noordzijも教えていましたしね。

Amalia is available at OurType.

翻訳:藤高晃右